第四話 エリクッキングスタジオ 後編

本格的なフランス料理が家で作れる!
アケミ先生 さて、コロナ禍で我々料理家は、以前のようにいかなくなり大変な面もありますが、家で料理をする方が増えたのはうれしいですね。エリ先生のウリは「家でレストランのようなフランス料理が作れる」っていうところで、習いたい方は多いと思います。

エリ先生  はい、フランス料理に興味を持ってくれる人が増えるとうれしいですね。

アケミ先生 もちろん、私も先生のレッスンに興味津々です!そうそう、先生はテリーヌのレッスンされていますが、お聞きしたいことがあります。私もテリーヌを作りますが、なかなかレッスンに踏み切れません。なぜならば、火入れして、冷やして固めてからのカット…となると、時間がかかるからレッスンには向かないと思うんです。もしかして…まさかの差し替えをされているんですか?

エリ先生  はい、おっしゃる通り差し替えです。

アケミ先生 わ~!素晴らしい!しかし、経費も仕事量も倍になってしまいますね…

エリ先生  そうですね(笑)私の場合、大小の型を二つ使うんです。大きいので前日焼いて冷ましておいて、当日は小さいのを使って焼きます。

アケミ先生 前日というか、それ以前からの準備が毎回たいへんですね。

エリ先生  大きいテリーヌ型だと焼成に50分はかかってしまうんですが、小さいのなら30分くらいで焼きあがるんです。それなので、前日作ったものを試食して、当日のはお持ち帰りいただいています。

アケミ先生 なんと!お土産付きですか!素敵すぎる♡

エリ先生  あ、今日ね、テリーヌの試作があるの。ぜひ試食してください。あとタルトも。

アケミ先生 えええええ♡(言葉が出ません…(喜))

アケミ先生 入室した際に、美しいタルトは目に入っていたんですが(笑)先生は製菓もお得意なんですね!

エリ先生  私のフランス料理の先生がお菓子もやられるので、その影響が大きいです。私、その先生のレッスンお手伝いは、20年近く月に一回していましたね。

アケミ先生 フランス料理に携わっていた時期が長いですね。わ~、このテリーヌをレッスンするんですね。美味しそう!…あれ?このソースはテリーヌ用ですか?

エリ先生  いえ、ディップなので、バゲットにつけて召し上がってください。これは、セルヴェルドカニュといって、裕福な人たちが食べる仔牛の脳みそが高級品で食べられない貧しい絹織り職人が、チーズで作ったものです。あと、キャロットラペは、レッスン用ではなく我が家にある常備菜です。

アケミ先生 これは習いたくなりますね!…あら先生…何をご用意されているんですか?!(にやり)

エリ先生  ロワーヌ地方の泡です(笑)足りなかったら白も冷えてますから。

アケミ先生 いえいえ、そんなにいただけません(笑)お気遣いいただいちゃって恐縮です(汗)

エリ先生  いいんですよ。なかなかない機会と思いましたので。だってね、外で会うことはあっても、我が家にいらっしゃることはないでしょうし。

アケミ先生 私、先生のレッスンに来るかもしれませんのに(笑)でも、遠慮なくいただきます!

アケミ先生の心の声 (ううう…美味しい(涙)秘密のスパイスで美味しさが増す。ワインと合う!真面目にエリ先生のテリーヌ習いたい!そして、軽食を楽しんだ後のリンゴのタルトがまた美味しい(感激の涙))

エリ先生  今日の午前中に焼いたから生地がサクサクでしょう?タルトは生徒さんのお気に入りで、皆さん、復習してくださっています。

アケミ先生 これは復習しますよ。だって、これが家の冷蔵庫にあったらうれしいですもの!

生鮮食品の買い物はレッスン当日に
食事とワインを楽しみながら、おしゃべりが続く…どの店が商品の質がいいか、とか、鴨肉の仕入れの話題、野菜の鮮度の話。お互い男性クラスを持っていることから、男女の生徒さんの違い。そして、なんと、二人が気になっているマイキッチン登録講師がかぶっていたという(笑)そして、その先生のレッスンに行こう!という相談にまで発展。

アケミ先生 雑談が楽しい(笑)…でも、インタビューに戻ります。えっと…先生のところは、コロナ禍以降、デモンストレーション形式ですが、皆さん、キッチンの周りに立たれる感じですか?

エリ先生  いえ、座っていただいています。立って見たり写真撮ったりするのは自由ということで、キッチンカウンターの前に椅子を並べているのですが、高さが同じなので調理はよく見えます。ガス台は見えづらいので、火入れの時は、ガス台の方に集まって撮影されていますね。

アケミ先生 立ちっぱなしがつらい生徒さんもいると思うので、座って見られるのはいいですね!私は実習形式なので、生徒さんたちはずっと立って、手を動かして…って感じなんですよね。どっちがいいのかなぁ…

エリ先生  一部の生徒さんですが「見て食べれるなんてしあわせ~」と(笑)。でも、コロナがもう少し治まったら、実習レッスンとデモのみのレッスンと分けてもいいかなぁ~と考えています。以前は私も実習していましたので。あ、それで、生徒さんが疲れないように、低反発のスリッパなんですよ。皆さん、はきやすいって喜んでくださっています。

アケミ先生 先生、やさしい♡私も低反発スリッパをチェックします!あと、先生見ていて感じたことですが、やっぱり講師歴が長いせいかおもてなしが慣れていらっしゃる。先生は、レッスンもスムーズなのでしょうね。

エリ先生  いえいえ、当日はドタバタになりますよ。私は心配性だから、何か足りていないものはないかしら、と朝からたいへん。

アケミ先生 わかります!私もバタバタし過ぎて、余計なエネルギー消耗激しいです(笑)前日の買い物もそうですが、当日は朝からキッチン立っていますものね。だいぶ慣れましたが、以前は終わると寝込んでいました。

エリ先生  そうですね。うちは平日レッスンが12時スタートなんですが、それでもバタバタします。生モノは当日買い物に行くので…

アケミ先生 そうなんですね…ん?…えッ?当日に買い物?!(意外な発言に反応遅れる)

エリ先生  生モノだけですけどね。試食時間が遅くなるので申し訳ないのですが、賞味期限が心配なので、生モノ購入は当日って決めているんです。レッスンの日は、犬を預けて、それで買い物もしてきて…お店に予約はしますけれどね。

アケミ先生 予期しないお話に驚きました。先生の丁寧なレッスンに頭が下がります。ただでさえ忙しい当日に…本当に素晴らしいことです。では、将来の展望についてお話を伺いたいです。

エリ先生  へルシーフレンチをやりたいと思っています。私の生徒さんは、食べるのが好きな方が多いですし、美味しいものを食べられる健康を保ってほしいと思うんです。食品で良いと言われるもの…例えば油とかね、からだに良いからと言ってどんどん足していくのではなく、何かと取り換えるべきと思うんです。

アケミ先生 バランスが大事ですよね。毎日摂らなきゃいいのだと思います。

エリ先生  ほどほどにね。何かを減らす場合もバターがゼロというのではなく、少し入れて香りを楽しんだり、量を考える。可能なところで美味しく食べられるものを提案したいです。生クリームの代わりに豆乳とかね。あと、ミネラル、カルシウム、食物繊維を摂るとか、そういった健康志向のフレンチもいいと思います。

ハードル高いかな…というものでもトライする人が増えています
アケミ先生 最後に、長年お教えされている中で素敵なエピソードがあったら教えてください。

エリ先生  男性生徒さんのエピソードなんですが、奥様が出かける日に夕飯を作るようになったそうなんです。で、お嬢様が「パパ~この前のアレが食べた~い」と言うらしくて、そうするとお父様はがんばって家族のために作るんですって。その話を奥様に教えていただいて、さらに「食事を任せて出かけられるようになったので助かっています」とお礼も言われたんですよ。

アケミ先生 いいお話ですね。私、料理って家庭に幸せを呼ぶと思うんですよ。そのエピソードのパパのご飯には愛情が含まれていますよね。だから、美味しく仕上がってお子様が喜んで。ママも助かるし、パパは褒められてうれしい。うーん、素敵なエピソードだなぁ。

エリ先生  あとね、私のレッスンは、食べるだけでもいいんですよ。「美味しかった~楽しかった~」で。それで、明日からまた仕事がんばろう!って思ってもらえたら、私はそれでいいと思っています。

アケミ先生 プラス、先生のレシピをいただける喜びもありますよ。だって、こんな本格的なフランス料理!これは、食べたら作りたいと思われるはずです。

エリ先生  味覚を磨くことが大事なので、食べてほしいと思っています。作ろうと思った時に、目指す味がわかりますからね。あと、ハードル高いかな…というものでもトライする人が増えています。私、テリーヌはどうかな~と思ったんですが、意外にうけていて皆さん復習されて家で作っているんですよね。

アケミ先生 私も生パスタをレッスンの時、手で伸ばす予定が、時間の関係でおそるおそるマシーン使ったんです。「手で伸ばすって言ったのに違う」とお叱りの声が上がるかと思ったんですが、皆さんが「パスタマシーンを買う!」と(笑)意外な反応にびっくりしました。

エリ先生  ええ、多分買いたくなられると思います。普段のご飯レシピはインターネットでいくらでも見つけられますけどね。専門的なものは正解がわからないから、皆さん習いたいんです。だから、アケミ先生の生徒さんは、パスタマシーンの使い方を知ったから欲しくなったんです。

アケミ先生 学ぶっていいですね。我々講師も学びを続けたいですね。

以上、対談終了。

私のエリ先生の印象は「誠実」と最初に書いたが、お話伺って、さらに、真面目な方、と確信した。時間のかかる調理を差し替えしているとは…そして、当日の買い物の話にもびっくり!私も真面目サイドなので(意外にも)、安心して指導を受けられるエリ先生に習いたいと思った。何を学ぶか?というのも大事だけど、どんな先生に習いたいか?ということも大切だと私は思う。本格的だけど家で作れるフランス料理。講師歴が長く、調理師学校勤務歴もある誠実なエリ先生なら間違いない。フランス料理を習ってみたい方は、ぜひチェックしてください!

取材後記
教室運営「あるある話」で笑ったり、レッスン失敗談の告白?など、同業の先生との話は毎回盛り上がる。でも、エリ先生との対談で一番テンション上がった話題は、使っているオーブンや調理器具、食器の話。「生徒さんは自分と同じにおいがする」と笑顔でおっしゃられたエリ先生。そんな先生とレッスンできたらそれは楽しいことだろう。そうそう、余談だが、その後、我々は、気になるマイキッチン講師のレッスンに申し込んだのである。インタビュー業をしていなかったら、私にはありえない出来事だ。同業の先生のレッスンに行くなんて、一ミリも考えたことがなかったのに、これまた同業の先生とご一緒して学ぶなんて。自分の変化に小さな感動のようなものがこみあげてきてしまう。学ぼうという意欲。大事だと思う。…ということで、先生の友達ができたことで新しい世界が見つかったことも報告しておこう。あと、記事書き上げた上での報告…インタビュー録音時間、相変わらずの3時間超えでした(正確に言えば3時間25分)またかい?ワインもいただいちゃってるし…もーこのインタビュアーったらナニヤッテンダカ!

取材先:エリクッキングスタジオ

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紹介した料理教室に行ってみましょう
エリクッキングスタジオ
神奈川県/横浜線・小田急線町田駅
料理教室イメージ
料理教室イメージ

おうちで作れるやさしいフランス家庭料理の教室です。

初心者歓迎
初夏のフレンチ アジのえびはさみ焼きトマトソース 赤ピーマンと豆乳のスープ あんずとサワークリームのケーキ

価格:6000円(税込)

開催日:5/11、5/16、5/30、6/8、6/20

その他のコースもあります

取材・撮影・文
Class A's Kitchen
中尾明美