第一話 食養教室 天使の台所 前編

心躍る新企画 ハローティーチャー
 新企画、My Kitchenで活躍されている先生へのインタビュー。伺う前の懸念。それは、インタビュアーのしゃべりすぎ。いやいや、アナタ、今回は聞き役ですよ!(はい、気をつけます)。
 しかしながら、事前メールやり取り中、ダメなインタビュアーの未来がうっすらと見えていた。
「話が乗ってしまいそう…」
 取材前夜、iPhoneの録音機能を確認しておいたのは言うまでもない。初めて使う機能だったが、お喋りなインタビュアーの無難なアイデアだ。さあ、どうなることやら。

 先生のもとに伺ったのは、世間一般の人々が新生活を送り始める時期。新しいことが始まる時は、期待に胸が膨らむ。私も新企画を始めるにあたり、心躍らせながら小田急線の電車に乗った。車内では、鼻唄が出てきそうな面持ちで先生とのメールのやりとりを確認。
 私がわくわくしていたのは、新しいことへの期待だけではなかった。この日、なんと、先生の食養レッスンの初回メニューでお食事をご用意くださるということだった。
 その提案をいただいた時、インタビュー連載が続くことを考えて丁寧にお断りをした。ところが、首を縦に振らざるを得ない状況となった。
「私が愛する玄米ちゃんを召し上がっていただきたい」
 そう先生がおっしゃったのだ。実は、そういうのに弱い。「玄米ちゃんって…」そんな可愛い子、断れない。ぜひ出会ってみたいではないか。

 小田急線経堂駅を降り立ち、Googleマップに従って商店街を歩く。商店街が終わったところの信号を渡ってすぐのマンションがレッスン拠点だ。パティオのある素敵な建物の1階。緊張しつつインターホンを鳴らすと、やさしい笑顔のこいけ先生がお迎えくださった。

 こちらのお宅は、自宅ではなくレッスン専用の部屋ということだった。ダイニングルームには大きめなテーブルに椅子が6脚。そして、美しく生けられた花や観葉植物。壁に掛けられた額は優雅なしつらいである。準備されたお皿やグラス。アケミ先生のワクワクは止まらない!(インタビュー、がんばれ…笑)

 案の定、いきなり子育ての話、運命の話、算命学の話(我々は同じカテゴリーだった)、神社の話…予想通りであったが、別の話で盛り上がってしまう。
 キッチンからシューシューと響く圧力鍋の音が心地いい。話を伺わなきゃいけないのに、調理の音に気が向いてしまう。職業病? しかも、私のために用意されている玄米を炊く音だもの。気がそれてしまい、ついつい話が脱線してしまう。でも、同じ仕事をしている方とお会いするのはやっぱり楽しい。…いや、だめだめ(笑)
 仕事に戻る努力をしてみる。
「えーと…お教室名ですが…」

というわけで、ここから対談形式で書いてみようと思う。

思い切って教室名を変えて、玄米食と発酵のレッスンに集中することに
アケミ先生 天使の台所という教室名ですが、こちらはどういった経緯があっての名前なのでしょう。

こいけ先生 天使のために作った料理教室だからです。ここは「天使が集まる台所」なんですね。本当は子供食堂か子供の料理教室をやりたかったんです。正しい食を広めるには子供からと思ったのと、子供の貧困問題も解決できたらいいなと思っていました。でも、お子様ってアレルギーなど、いろいろな制約がありますよね。慎重にならざるを得ません。そこで、身近な大人の方にお教えすることから始めました。うちのレッスンに来る方皆様を天使と思っています。

アケミ先生 素敵な教室名ですね。その先生のお教室ですが、たったの3年間で天使さんの延べ人数が3千人ってすごいですね。

こいけ先生 クックパッドドゥの時、私のカステラレッスンがブレイクしたんです。天使のカステラといって、ふわふわしていて、ひとつのボウルで簡単に作れるというのが人気となって、口コミでレッスンが広まりました。クックパッドドゥが閉鎖となって、My Kitchenに移ってからは、玄米レッスンにはまってくださる生徒さんが増えました。

アケミ先生 昨今、健康志向の方が増えていますから、玄米レッスンは需要がありますよね。先生の玄米レッスンを受けるとからだの変化があるとのことですが、具体的に教えてください。

こいけ先生 玄米食に変えるとだんだんからだが変わってきますよ。まず、2,3日で便通がよくなります。そして、1週間でからだが軽くなるのがわかります。実は、一昨年、私自身のからだである人体実験しました。酵素栄養学と発酵食を取り入れてプチ断食したのですが、体重が4.5キロ落ちました。アケミ先生と同じく私も体内年齢が31歳なんですよ。

アケミ先生 わ~からだの年齢が同じなんですね!(※ちなみに我々は50代後半)そうですね。私も食べ物で6キロ痩せて血圧も正常になりました。食べ物でからだは変わりますよね。

こいけ先生 はい。この酵素栄養学を取り入れる実験をしてみたことで、思い切って教室名を変えて玄米食と発酵のレッスンに集中することにしたんです。

アケミ先生 あ、それで「食養教室」となったのですね。では、そのレッスンを受けられた生徒さんたちの変化はどうでしたか?

こいけ先生 実は、血液って3~4ヶ月で変わるものなのです。このレッスンは、3ヶ月一回なので、次のレッスンで生徒さんにお会いすると、変わっているのがわかります。体重だけでなく見た目も変わりますので。そうなりますと、生徒さんたちは、ご友人に「あなたどうしたの?」と聞かれるそうです。そこで「実はこんな料理教室に行っていて」となって、生徒さんのご友人もレッスンにお越しになられるんです。
「玄米食べていれば薬は飲まなくてもいい」と言われ、思い切って、えい!と服用やめて玄米の世界に飛びこみました
アケミ先生 目で見てわかるというのは、強力なクチコミですね!では、先生の玄米との出会いについて教えて下さい。

こいけ先生 私、元は陰性体質だったんです。太りやすいのに甘いものが好きで、低血圧で肩こりひどいし、便秘に生理不順。小学生の頃から肩もみしてもらっていたくらいです。そんな私が玄米と出会ったのが、28歳で第一子妊娠中の時でした。妊娠に伴い便秘が悪化して、その時に玄米を教えてもらいました。これが初めての玄米。そして、31歳で第二子を妊娠。その一年後、交通事故に遭ってしまい、ICUで治療しました。無事退院できたのですが、脳挫傷後遺症の関係で薬を一生飲み続けなければならないからだになってしまったんです。その後、薬に支配される人生が始まって…

アケミ先生 わかります。私はがんを経験していますが、たった7年でも薬をのむのが嫌だったので一生の服用はつらいですね。

こいけ先生 そうなんです。飲み忘れたらどうしよう、という不安や、あれ?今日飲んだかしら?と服用のことばかりが気になって…そんな様子を見るに見かねた友人が連れて行ってくれた先が食養料理、マクロビオティックの教室でした。そこは、医療を介しないで出産させたいという意向の助産師さんがやられている教室で、食で体質を管理する考えでした。

アケミ先生 からだの自然治癒力を引き出すお教えですね。

こいけ先生 先生は髪や肌の色でその人の体質がわかるお方でした。その先生に「玄米食べていれば薬は飲まなくてもいい」と言われ、思い切って、えい!と服用やめて玄米の世界に飛びこみました。あれから25年。玄米菜食に変えてから生理不順、肩こりなくなり、子供がぽこぽこ生まれました(笑)最後の子は42歳で産みました。

アケミ先生 それはすごい!それにしても、5人もお産みになられていてご立派です!私は2人の子育てで精いっぱいでした。

こいけ先生 私ね、30代後半で自転車4人乗りしていたんですよ。ハンドルに荷物ぶらさげて(笑)

アケミ先生 え~!それもすごい!先生、本当にパワフルママでしたね。私も前と後ろに子供乗せていましたけど、3人乗りくらいじゃ大したことないですね(笑)この頃、玄米菜食でしたよね?それで、お元気だったのかしら。

こいけ先生 ええ。睡眠時間は3,4時間だったけど、全然平気でしたよ。なによりもからだが軽くて楽でした。ストレスも感じないし、便秘も冷えもすっかり治っていました。そんな風にからだが大丈夫になったのは玄米のおかげなんです。

アケミ先生 お子様を5人も妊娠されたのも玄米食と関係しているのでしょうか。

こいけ先生 そうです。あと、女性ホルモンに関しては、初潮前、閉経後が大事です。初潮前と閉経後は、外からのホルモンをダイレクトに受けてしまうんです。例えば牛乳とかホルモンのお薬とか。私はそういったものは摂らないようにしています。

アケミ先生 なるほど。私は、野菜多めの生活していますが、肉も乳製品も摂ります。先生は、そこまで徹底されていてすごい。

こいけ先生 じゃあね、今日は乳製品使わないティラミスをご馳走しますので、味わってみてください。

アケミ先生 わ~楽しみです!えっと、では、ここで少し話題を変えますね。お教室を始めて、ご自身が変わったことはありますか?

こいけ先生 そうですね…たくさんの方と接することで色々学びましたね。以前は、何でも受け入れてきたんですけれど、自分なりに線を引くようにしてから、人生の流れが変わってきたような気がします。

アケミ先生 ああ、わかります。私も近い経験あります。似ているかも。実は、私…

 ここで、インタビュアーの話が止まらなくなり、SNSのフォロワーの増やし方などに話が発展。「我々はそういうテクニックは使えませんよね~」と、妙に同調。
 ここでタイマーが鳴り。

こいけ先生 あ、できました。

アケミ先生 ごめんなさい。やっぱり話が脱線しちゃいましたね。悪いインタビュアーだわ。でも、タイマーのおかげで話が止まりました(笑)

こいけ先生 アケミ先生のお話は楽しいからいいんですよ~。さあ、お食事を用意しますね。うふふ。実は泡(スパークリングワイン)を用意しています。

アケミ先生 ええええ!うれしいです♡ご存じでしたか(笑)

こいけ先生 もちろん!アケミ先生のSNS見ていますので(笑)では、用意する間、飲んで待っていてくださいね。

アケミ先生  いつも作る側なのでうれしいです~(心の声/ ああ、まさに天使の台所…至れり尽くせり。天国だわ)

取材・撮影・文
Class A's Kitchen
中尾明美